いさ走る(主張・メディア掲載)

2012.10.26 新しい農業技術が拓く、問題解決の可能性<上>

みなさん、大阪の「食糧自給率」をご存じですか?
カロリーベースでは、わずか2%です。
日本全体でも毎年減少をつづけており、ついに30%台へと突入しました。
日本の「農業」は今後どうなっていくのか、あるべき姿とは何か。
こうした問題を解決するヒントになれば、との想いから
先日、「グリーンファーム」という農園を訪れました。

 

■生産性や農作業にとって革命的な『高床式砂栽培農業』

この農園では、『高床式砂栽培農業』と呼ばれる農法に取り組んでいます。
太陽の光を全面から採り入れられるビニールハウスを設置し、
その内部に鉄パイプなどを組み合わせ、
地上からの高さが70センチメートルの位置に、高床式の「砂」の培地をつくります。
培地の表面にはホースを配置し、そのホースにある小さな穴から
わずかながら肥料が溶け込んだ水が培地へ注がれます。
(写真で見た方が、きっと理解してもらいやすいと思います)

この栽培方法がスゴイ!と思ったのは、「生産性」です。
地面の土で育てる一般的な露地栽培と比較すると、
単位面積当たり3倍という密集率で野菜が育っていました。
しかも、どんな「露地栽培」の名人であっても、
レタスの場合で年間5期作(同じ土地で1年間に5回栽培すること)が限界のところ、
この方法では年間で12期作が可能!
それは、「土」でなく「砂」を使っているためなんです。
定期的に土をかえしたり、肥料を混ぜ合わせて栄養分の定着を待つといった手間が
まったく必要ありません。
何回も同じ土で作物を育てると起こる、「連作障害」もありません。
さらに、その分だけランニングコストが安く済みます。
また「水耕栽培」と比較しても、圧倒的に格安だとのことです。

生産性に加えて、「病気」にかかる作物が極めて少ないのも特徴です。
これは、農作物がかかる病気は、「土」に潜む病原菌が原因ですが、
「砂」を使った栽培方法では、感染被害のリスクが非常に少ないのです。
今回見せていただいたのは、
害虫や病気によって絶滅が危惧されている
「天王寺かぶ」や「難波ねぎ」。
いずれも大量に栽培されているという、驚きの光景が広がっていました。

もう1つ、これは重要と感じたのは、農作業そのものに革命をもたらしたことです。
これまでの一般的な苗つけや収穫という作業は、
長時間ずっと腰をかがめて行う大変な作業です。
しかし、地面で育てるよりも高い位置に培地がある高床式栽培では、
腰をかがめるという姿勢が少なくて済むのです。
また、大がかりな農機具などを使うこともなく、ハサミがあれば十分な軽作業が中心です。

つまり、高齢者や障がいをもつ方々でも、農作業に従事することが可能なんです!
ちょうど私が訪れた際も、作物がたわわに実った「高床式」の培地の間を、
車イスに乗って行き来する方々を見かけました。

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