アベノミクスが、これからどこに向かうのか。
自公政権の取り組みで、2年半前とは大きく状況は変わりました。GDPは、2007年度以来の500兆円台が視野に入ってきました。雇用も、有効求人倍率は23年ぶりの高水準、失業率は18年ぶりの低水準です。企業収益は過去最高、倒産件数は24年ぶりに1万件を下回りました。東証1部の株価総額も1989年のバブルの水準を超えて、過去最高です。
では、良好になりつつある景気を実感できているかといえば、その答えは様々です。実感できている方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。その原因は何なのでしょうか。そして、これからどのように変わっていくんでしょうか。
アベノミクスの成果を実感されている方々は、どちらかといえば、株への投資など、「資産」を持っていらっしゃる方々が多いかもしれません。これは、アベノミクスの戦略そのものに原因があります。
アベノミクスで予定していたことは、まずは「実質金利」をマイナスに持っていくことでした。金利よりも物価上昇が高いと、「実質金利」はマイナスになります。まず、量的緩和を通じて(名目)金利を低下させる。また、2%の物価上昇実現への強い姿勢を示す。達成するまで国債を買い続ける。これによって、「実質金利」が下がっていきます。そして、マイナスにまで下げることができれば、企業はお金を抱え込んでいる(内部留保)よりも、投資をした方が得になります。そこで、企業が投資を始める。そうすれば、お金が市場に回り始め、景気が好転。さらなる物価上昇につながり、それが新たな投資を生んでいきます。これが、アベノミクスによる「デフレ脱却」のシナリオでした。
ところがその途上、消費税の8%への増税が、この流れを弱めてしまいます。アベノミクスでまず現れるのは、「資産効果」でした。株などの「資産」を持っている方々が消費を拡大させる。そしてその後、「所得効果」が発揮されます。一般の「所得」者層の消費が拡大していく。消費税8%は、いよいよ「所得効果」もこれからという時に、消費を一気に冷え込ませる結果となりました。
消費税の増税後、消費が冷え込んで戻ってこないのは、政府は当初、台風や冷夏のせいにしていました。天候がわるいので、遊びに行くべきときに遊びに行けず、消費が滞ったと。当時、それを聞いていて、何か違和感がありました。結局、根本的な問題は、15年間もデフレが続いて、分厚い中間層の一部が低所得者層におちいってしまったこと。そして、年金生活者の皆さんの動向です。年金で生活される方々にとってみれば、物価高であれば、年金額は調整されて、増えます。しかし、消費税に対しては何も支援がない。つまり、消費税の増税は、低所得者の皆さん、年金生活者の皆さんの生活に大きな影響を与えることになります。
それを緩和するべく、公明党が実現を目指したのが「軽減税率」でした。しかし、8%の時には導入されず、代わりに「簡素な給付措置」が採用されました。残念ながら、「簡素な給付措置」では、十分な消費の下支えにはならなかったようです。
こうした点を考えると、2017年に消費税を10%に増税する際には、まずは「軽減税率」を実現することが必要です。同時に、あわせて何らかの所得補てんも考慮しなければいけません。消費税を上げて消費が冷え込み、結局税収が減ってしまう事にもなれば、全く意味がありません。低所得者の方々、そして年金生活者の皆さん、あるいは子育て支援策などとして、直接、家計を補助できるような措置を、十分に考える必要があります。これができれば、10%増税時に、消費を腰折れさせることなく、「デフレ脱却」を成し遂げることができると思います。
いよいよこれからです。アベノミクスの成果を、どなたにとっても実感できるものとする。8%への増税のダメージを乗り越えて、ようやく様々な数字も戻ってまいりました。本年の春闘の賃上げ率は、17年ぶりに高水準となりました。これまで、物価が上がった分、多少の賃金アップがあったとしても、生活は苦しかったんです。ところが、ここ数か月では、やっと実質賃金もプラスとなりました。つまり、物価の上昇以上に、賃金が上がり始めたんです。景気回復もいよいよこれからが本番。実感できる景気回復まで、粘り強く、議論を進めていきたいと思います。