いさ走る(主張・メディア掲載)

2020.05.24 いま必要な、企業への資金繰り支援について

いま必要な、企業への資金繰り支援について

~二次補正予算に向けた議論~

 

現 状

企業支援については、「持続化給付金」の100万円、200万円の支援のほか、日本政策金融公庫や民間金融機関を通じた「融資」がメインとなっています。

しかし、「持続化給付金」の規模感、あるいは公庫などの融資において国民生活事業(小規模500万円くらいの融資)が中心となっていることにも見られるように、これまでは、どちらかといえばサービス業や飲食業の小企業を中心とした支援策でした。まだまだ十分でないところもあり、たとえば雇用を守る「雇用調整助成金」の拡充(上限を8,330円から1万5,000円へ)や、「家賃」などの固定費を支援するための措置の充実(全国で家賃支援のために1兆円)などが必要です。ここは、現在二次補正予算に向けて議論を進めています。

いまさらに上乗せで必要なのは、毎月大きな赤字を重ねている中堅企業や大企業への支援です。たとえばモノづくりの中企業では、小さめの企業でも年商10億円くらい。毎月数千万円の赤字が出ています。また、多くの店舗を有する外食産業等では、これまでの支援額では規模が小さすぎます。これまでの「融資」による支援では借金がかさみますし、企業のバランスシートがゆがみ、今後、銀行から資金を借りる時に不安が残ります。

こうした状況から、公明党の財政金融部会では、「資金繰り」支援に特化して以下のような具体先を検討し、少なくとも30兆円規模での資金を用意するよう政府に申し入れを行いましたので、ご紹介します。

 

方 針

状況は、企業の規模や業態によって様々です。一律の支援では、各企業のニーズに、十分にこたえることができません。そこで、「資金繰り」支援策のためのメニューを多様化して、さらにその中で選択できるメニューとして「長期の資本性(劣後)ローン」、資本注入となる「ファンド」を準備します

なお、これら制度の多くが国費(税金や国による借金)の投入を必要とするため、国民の皆様への説明が果たせる制度とする必要があります。加えて、支援することが日本全体の経済にとって意味があるという視点が重要なので、大企業、中堅企業が制度を利用する際には、下請け企業との取引条件の配慮などを要件に加えておく必要があります。

 

(1)大企業、中堅企業への支援

■日本政策投資銀行(商工中金)の危機対応ツーステップローン【資本性ローン】

政府の財政投融資からの貸し付けにより、政投銀と商工中金が危機対応業務を実施しています。すでに5兆円の事業規模が用意され、新型コロナ対応として現時点での希望融資総額は2兆4千億円(一件10億円規模)に達しています。政府によって利子補給は行われませんが、政府から公庫への貸付利率がほぼ同じで、低利での貸し付けとなっています。今後の状況を見据え、財投を積み増しして、企業の皆様の安心感につなげていくことが必要です。

また大企業にとっては、借金ではなく資本として扱われる「劣後ローン」(返済が最後でよい)は意味があります(「劣後」が機能するためには、「長期」であることが必須条件)。過去に、ツーステップローンを「劣後」で商品設計したこともあるので、多様なニーズに対応するためには、この危機対応ツーステップローンを劣後ローンとしての設計を追加することも考えられます。

 

■産業革新投資機構(JIC)のファンド形成 【ファンド】

産業競争力強化法の改正をうけて、産業革新投資機構(JIC)は、ソサイエティ5.0や大規模事業再編、ユニコーン企業への直接投資を行う機構として、投資体制を構築中です。政府保証と財投の組み合わせで資金調達を行い、プライベートエクイティには数百億円規模で、テック系ベンチャーに対しては数十億円規模で投資を行うものです。

ちょうと投資体制を作っているところなので、コロナ支援として使いやすい仕組みとし、十分な資金を積み上げておく必要があります

 

■日本政策投資銀行「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」【ファンド】

資本性資金を供給するため、今回の補正予算ですでに創設されています。新事業開拓や異業種連携が条件となっており、民間金融機関が半分以上を協調融資する必要があります。補正予算の事業規模は4,000億円ですので、ここを積み増しておく必要があります

 

 

(2)中企業への支援

■日本政策金融公庫「資本性ローン制度」 【資本性ローン】

現在、日本政策金融公庫においても、全ての債務に劣後するため自己資本とみなされる「劣後ローン」が運営されています。元金は5年1か月、7年、10年または15年での期限一括償還、無担保、無保証で限度額は3億円です。この「劣後ローン」と民間金融機関が協調融資を行うスキームとなっています。

東日本大震災の際には、「震災型資本性ローン」として一社当たりの限度額を7億2千万円に拡大し、また利子も0.4%~3.6%と低利に設定、10年の期限一括償還として提供されました。こうした使い勝手の良い低利の「劣後ローン」があれば、地域の金融機関から見れば、返済の優先順位がより低いものが他にあることから、追加で企業に資金融資をしやすくなります。よって、今回も政府が一定程度を利子補給する、低利の「資本性劣後ローン」を構築すべきです

 

■REVIC(地域経済活性化支援機構)【ファンド】

地域経済の中核を担う企業の立て直し機関として、REVIC(地域経済活性化支援機構)があります。JALの再生でも実績のある機関で、各都道府県において地域支援を対象とするファンド、災害復興を支援するファンドなども形成しています。

しかし、これまでの行政改革の流れで事業縮小の過程にあり、来年3月までしか新規事業を受けられないこととなっています。REVICを今一度強化し、地銀とREVICの共同出資によってファンドを設立、再生を行う「地域活性化ファンド」(投資実行実績は287件、一件数億円)などを活用することが考えられます。

そのためには、REVICの縮小を変更するための法改正、人材確保などの組織強化、そして必要な資金の積み増した必要です

 

■中小機構の「中小企業再生ファンド」【ファンド】

中小機構が出資する「中小企業再生ファンド」も、事業再生の重要なツールとして機能しています。各都道府県にファンドが設置されており、地銀や保証協会などと連携して出資して、事業再生にあたってきました。

今回の補正予算では、「中小企業経営力強化支援ファンド」を創設し、一件あたり数億円~数十億円の資金提供が可能となっています。従来のファンドが再生中心であったものから、今回のファンドは再生後の成長までも視野に入れた、レベルの高いものとなっています。

中小機構の負担分については国費投入であって、金融市場のみから資金調達を行うREVICと比較すれば、一般的に支援のハードルは低いと思われます。よって、二次補正予算では、ここを積み増しておくことも必要です

なお、これを機に廃業や統合を考える中小企業も存在するため、企業の統廃合のプロセスでの支援も重要なミッションとなります。すでに各都道府県にある再生支援協議会との連携を密にする体制作りも重要です。

 

■無利子無担保据置き5年の資金繰り支援 【無利子ローン】

現在、各企業に対して無利子無担保据え置き5年で資金繰りを支援しており、日本政策金融公庫の融資枠は1億円、民間金融機関を通じた融資枠は3,000万円となっています。現時点ですでに多くの企業に利用されていますが、モノづくり企業をはじめ中企業などは、まさしくこれからコロナの影響が深刻化するところもあります。

よって、希望する企業に対して確実に融資がなされるよう、原資の積み増しは必要です。

 

※その他、医療機関の資金繰り支援は、別途の枠組みで必要です。コロナ患者を受け入れた病院の方が、より赤字を重ねています。無利子無担保据置き5年の同様の融資が、「福祉医療機構」から提供されていますが、限度額をはじめ拡充に