いさ走る(主張・メディア掲載)

2014.08.12 新しい薬を、治療法を、一刻も早く患者さんの元へ

日本には、医療の現場を変えるかもしれない新薬の「種(シーズ)」や、医療の技術が、研究所や大学でたくさん生み出されています。しかし、それらがなかなか実用化に結び付いて来ませんでした。また、欧米で使える薬が日本で使えない、いわゆる「ドラック・ラグ」が長らく問題になってきました。その理由は何なのか。医薬品や医療機器の審査にあたる「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」、その関西支部(PMDA-west)が昨年10月にオープンしたので、現状を伺いに訪ねました。

新しい薬や医療機器が、医療の現場に届くためには、平均10年以上にもなる「研究開発期間」と、そしてその後、安全性や効き目をPMDAで審査する、「審査期間」が必要となります。これまで、この国の「審査期間」が長いと言われてきましたが、現在ではだいぶ解消されたようです。短縮されて、ほぼ欧米並みと言われています。そしてもう一つの原因、それが平均10年以上という「研究開発期間」の長さです。

なぜ、日本の「研究開発期間」が長いかというと、最後に必要となる「審査」、つまり日本の規制にどのように適合させていくか、どういう試験が必要かなど、開発を進める研究者やベンチャー企業が、必ずしも十分に把握していない場合があります。つまり、研究開発の中で行ってきた試験が、規制の観点からは必要でなかったり、あるいは別の試験が必要だったり。こうした出戻りもあるのが実情です。最終目標が、「患者さんの手に、新薬を、また新しい医療機器を、一刻も早く届ける」というのであれば、その最終目標に向かって、どういうハードルがあり、どういう試験が必要か。これを、よくよく審査側と共有する必要があります。

PMDA-westでは、こうした相談を、「薬事戦略相談」として、企業や研究者に提供してきました。医療特区にも指定された関西には、先進的な医療技術や、創薬のシーズが、そこかしこに眠っています。PMDAの職員の方々は、少ない人数で、日々、努力をされています。しかし、まだまだ相談件数も伸びておらず、産官学が一体となったイノベーションを生み出す体制には、到っていません。

ここは、われわれ政治側の努力で、PMDA-westと、関西の中小企業と大学が、もっと緊密に連携できるような、そういう環境づくりを推し進めていかないといけないと強く思いました。