いさ走る(主張・メディア掲載)

2013.12.07 「特定秘密保護法案」の審議に思う ②

2.「知る権利」は守られるのか 

一方で、基本的人権にかかわる、妥協できない大事な観点があります。それは、①国民の「知る権利」を徹底して守ることであり、またそのための「報道の自由」を守ることです。そしてまた、②政府が、国民に知られると都合の悪い情報について、「勝手に」特定秘密としないよう監視することです。さらには、③たとえ「秘密」となったとしても、一定期間が過ぎた後には、その「秘密」を公開して、その時の政府の判断は正しかったのかどうか、後世の歴史の審判を受ける必要があります。

我々公明党は、政府から最初の案を受け取った時に、この上記3つの観点から、法案について徹底的に議論しました。我々公明党の大事な仕事の一つは、巨大与党である自民党に対して、もし行き過ぎたところがあれば修正させ、バランスのとれた政治としていく。国民の声を反映させて、偏りすぎない、中道の政治を行っていくことだと思います。そこで同法案についても、「反対」の立場である団体や個人にも会議に出席して頂いて、合計13回にわたって議論を重ねてきました。その結果、我々は上記3点に対して、以下のような修正を行いました。

①「知る権利」については、最初の政府案には、「報道の自由に十分配慮する」という条文しかありませんでした。「十分」とは、どれだけなのか。「配慮する」では、単なる努力規定、精神規定となってしまうのではないか。こうした懸念から、我々は「国民の知る権利」をまず、はっきりと明記させました。そして、具体的に、通常の取材活動、これまでメディアが行ってきた取材活動は、「罰せられない」という、具体的な条文を盛り込みました。

各党との修正協議の結果、さらに条文を追加しました。一般の方々は「秘密情報」を得たからといって罰せられることはありません。あくまで「スパイ目的」、あるいは「国民の安全・安心を脅かす目的」をもって、しかも「金庫を破る」などの違法の行為でなければ、罰することが出来ない、との条文も入れ込んだのです。

②政府が恣意的に、都合の悪い情報を隠すのではないかという点については、政府案に対して、公明党は外部からのチェックを行う機能を盛り込ませました。「有識者会議」というものをつくり、政府が「秘密」指定する基準をつくる際、チェックする機関を設置することとなりました。さらに修正協議を重ね、「情報保全観察室」や「保全監視委員会」など、それぞれの機関が何重にも、政府の秘密指定をチェックできるように措置しました。

国会に秘密情報が来なくなるのでは、というご懸念も頂きましたが、それは全く逆です。これまでは、政府の役人が「これは秘密ですので、開示できません」と言えば、国民の代表たる国会にも、情報提供をする必要がありませんでした。しかし、今回の法案では、国会の求めに応じて、特定秘密も提供「しなければならない」としたのです。政府に対するチェック機能として、たくさんの機関が設置されますが、ではどこが一番、強力なチェック機関かと言えば、それは間違いなく、「国権の最高機関」たる国会なんです。もちろん、秘密情報を受け取る際には、国会自らが情報を守る体制づくり、ルール作りをするのは、言うまでもありません。

③永遠に秘密となるのではないかという懸念に対しては、以下のやり取りがありました。行政府の最高の意思決定機関は、総理や各大臣が参加する「閣議」です。ところが、「閣議」でのやり取りは、実は公開されていないどころか、その議事録すら作っていない状況です。これは、世界から見ても、あまりにいい加減です。同じ議院内閣制をとっているイギリスやドイツでは、「閣議」の内容は、30年後に情報公開されます。日本がこれまで、「閣議」の議事録すら作ってこなかったのは、明治維新の時代、山縣有朋・内務卿が、「議事録は、つくらなくて良し!」と決めてからであり、ずーっとそのまま変わっていないということです。

これについて、公明党の山口代表は、参議院本会議で安倍首相に質問をしました。現在の「閣議」の状況を改善すべきだ、情報公開すべきだと詰め寄りました。結果、安倍首相からは、具体的に改正に向けて検討を進めるする、との答弁を引き出したのです。

このように、政府案を作成する自公協議の時からすでに、公明党は自民党に対して、かなり激しく議論をぶつけてきました。今回、法案を担当した温和な先輩議員が、官邸入りしている自民党幹部を怒鳴りあげて、ここまでの修正を差し込んできました。公明党が自民党に「追従している」というご心配は、まったくありません。逆に、自民党から見れば、あまりにうるさく、「簡単でない」連立パトナーだと思います。