いさ走る(主張・メディア掲載)

2019.12.12 第200回国会って何だったのか。 ~その成果と反省~

12月9日、第200回国会が幕を閉じました。いまの国会では、会期の最終盤では、野党から内閣不信任案や解任決議が提出され、その演説が延々と続き、夜なべをするのが通例となってしまっています。今回は、野党の皆さんのいろんな思惑(?)があって、こうした「不毛な儀式」と言われても仕方ない議案はありませんでした。
しかし、与党の一議員として、反省すべき点もある国会だったと思います。
今国会では、その冒頭から二閣僚が辞任。引き続いて、首相主催の「桜を見る会」の追求に多くの時間が費やされました。こうした問題の原因が、憲政史上最長となった安倍政権の、その長期政権ゆえの「おごり・ゆるみ」、そして「やりすぎ」にあるとするならば、内閣も総理も、また我々与党も、自らの身をいま一度戒めるべきだと思います。
ただ「桜を見る会」そのものについては、各界で功績のあった方々を総理が招待するという1952年以来の歴史ある行事で、それ自体は否定されるものではありません。今後は、国民の皆様の疑義を招かないよう、招待者の基準やプロセスの透明化など、関連資料の在り方も含めて、抜本的な検討が必要だと思います。まずは立ち止まって、来年の開催を中止と決定したことは、あるべき対応だったと思います。

そのうえで、こうした疑惑やスキャンダルに国会の審議の多くが割かれたことは、残念でなりません。相次ぐ災害への対応や防災減災、世界経済の下方リスクへの対応、2040年まで働き手が減り続ける社会保障をどうするかなど、国会で議論すべき課題は山積しています。そうした国民生活の課題をしり目に、テレビカメラを引き連れてパフォーマンスを行い、また弱い立場の役人をフルオープンの場で締め上げるような議会活動ばかりが目立てば、やがて国会も国民の皆様から見放されることになるでしょう。
スキャンダルや疑惑の追及ばかりに焦点があたる国会ではなく、国民生活の抱える課題について、与野党がかみ合った形で議論できる国会となるよう、与野党が努力していくべきだと思います。

さて、「桜」ばかりに焦点があたった国会ではありましたが、実際は与党として法律を成立させ予算も編成するなど、多くの成果の上がった国会でもありました。

 

成果その1:災害対応と防災・減災

まずひとつは、災害対応です。今年は昨年に続き、台風被害などの多くの自然災害に見舞われました。国会会期中にも、こうした災害への迅速な対応や復旧・復興に向けた支援を行ってきましたし、今後も「災害ありうべし」との想定の下で、更なる防災・減災、国土強靭化の政策も大きく前進させました。

①対策パッケージの成立
その一つは、現場の声をいかした「対策パッケージ」です。
台風被害の直後、公明党は地方議員とのネットワーク力を発揮して、台風災害の被災14都県の各地を徹底してまわって、そこで寄せられた数多くの声を75項目にわたって取りまとめ、政府に提言を行いました。
今年度予算の予備費から支出した総額1,316億円の「対策パッケージ」の策定にあたっては、これら公明党の主張が随所に盛り込まれ、被災者の生活や農林漁業の再建、被災地の早期復旧に役立つものとなりました。例えば、中小企業支援としては、「グループ補助金」制度を導入。農家に対しては、早期再開に向け、果樹の植え替えや稲わらの撤去にかかる経費、農業用機械の修繕の支援を。また、保管していたコメの浸水被害にも支援策を講じることといたしました。

②被災住宅の一部損壊に対する新たな恒久支援制度
とりわけ、被災住宅への支援制度については大きな成果がありました。
9月の台風15号の際には、屋根が吹き飛ばされるなど、一部損壊の住宅だけで6万棟を超えました。しかしこれまで、こうした一部損壊の場合には、国の支援対象とはなりませんでした。そこで公明党は被災自治体の首長の皆さんとともに官邸に赴き、一部損壊への支援を求めました。こうして政府は、特例的に一部損壊を国の支援対象とし、認定調査の弾力的運用を決定しました。
さらには、この一部損壊への支援について、「恒久化も含めて検討すべき」と、安倍総理に国会質疑で問いただしました。この議論の結果、安倍総理からは「災害救助法の制度を拡充し、恒久的制度とする」との答弁を引き出し、最大30万円を補助することにもなりました。

 

成果その2:新たな経済対策

二つ目の大きな前進は、新たな経済対策を決定したことです。
政府は「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」として、事業規模26兆円の補正予算を決定しました。この予算の柱の一つは、防災減災のためのインフラ整備です。

①災害のためのインフラ整備
民主党政権で事業仕分けにあった八ッ場ダムが、自公政権で建設を続行し、ちょうどこの10月から運用が開始されたところでした。10月の台風被害では、この八ッ場ダムがフル稼働したおかげで、首都圏はぎりぎり洪水を免れました。今回の補正予算では、こうした水害対策を中心に、各地のインフラ整備事業、国土強靭化の予算が盛り込まれました。
また経済対策のもう一つの柱は、米国と中国の間の通商問題など、不安定な世界経済によって日本経済への影響を抑える様々な政策です。これらは、中小・小規模事業者や農林水産業、地方を重点的に支援することとしています。
その他、小中学校で1人1台のパソコンなどの端末が使える環境整備など、わが党が申し入れた政策提言も、補正予算に多数盛り込まれております。

②「就職氷河期世代」への支援
とりわけ、公明党が力を入れてきた「就職氷河期世代」への支援については、政府はすでに3年間の集中支援計画を策定して、正規雇用を30万人増やす方針を打ち出しています。今回の経済対策では、この「就職氷河期世代」への雇用支援の具体策が盛り込まれています。ハローワークに専門窓口を設置するほか、市町村におけるひきこもりサポート事業の強化、国家公務員の中途採用促進など、実行力ある政策が並んでいます。公明党は、こうした施策が着実に実施できるよう、3年間にわたる財政措置について、強力に支援していきます。

 

成果その3.外交

3つめの成果は、外交における成果です。
世界に目をやると、主張の対立から社会の分断への深刻化、自国中心主義や大衆迎合主義の台頭など、各国で政治の基盤が不安定となってきています。国際政治学者のイアン・ブレーマー氏は、こうした状況下での日本の政治、社会の安定は、世界でも際立っていると指摘し、「世界中の先進民主主義国家の中で、現段階で日本が最強のリーダーシップを誇っている」と評価しています。世界情勢の変化が激しい中で、世界経済の安定・発展、そして平和のために、政治が安定した日本が果たすべき役割に、ますます大きな期待が寄せられています。
今年は、日本が初議長を務めたG20大阪サミットや第7回アフリカ開発会議、ラグビーワールドカップなど、日本開催の多くの国際的行事がありました。これらを通じて、日本の存在感は確実に高まったと思います。また、地球儀を俯瞰する外交との考え方で、国連総会等の国際会議への参加や、二国間での首脳会談などを通じて、「〇〇ファースト」が世界に広まりつつある中で、自由貿易や多国間での協調を日本が引っ張ってきたことは、安定した政権だからこそできたことだと思います。

①日米貿易協定
今国会において「日米貿易協定」が承認されました。
米中貿易摩擦をはじめ世界経済に不安要素が増すなか、TPPから離脱を決定したトランプ大統領の米国を、再び世界の自由貿易の枠組みに戻すことができたことは、非常に大きな意義があるものでした。
当初、米国から譲歩を迫られるのではないかと懸念が示されていた「為替条項」も、回避できました。他国との協定を制限することとなる、いわゆる「毒薬条項」も回避できました。日本が「聖域」としていたコメを協定の内容から除外、無関税輸入枠も設けていません。加えて、米国からの牛肉の輸入には「セーフガード」が導入され、また逆に和牛の輸出については、その枠が300倍の拡大となりました。
自動車の関税については、米国との交渉において他国も譲歩をせまられた「追加関税」も、「数量規制」も、「原産地規制の厳格化」にも言及させることなく、完全撤廃を前提に米国と協議を継続するとなりました。野党の皆さんは批判をするようですが、そもそも当事者である自動車関連業界からは相次いで、「自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持・強化されることを歓迎する」とのコメントが寄せられています。「日米貿易協定」は、我が国にとって大きな成果と言えます。

②国内支援と攻めの両輪
一方、TPPや日EU経済連携協定、日米貿易協定によって、日本の農業や酪農など、現場の不安を払拭するためには、安心して生産に取り組めるような生産基盤の強化が欠かせません。とりわけ、肉用牛・酪農経営については、国内外需要が伸びている和牛の増頭・増産を図り、それを支える環境の整備、生産現場と結びついた流通改革等の対策に、今後も力を入れていく必要があります。
国内対策とともに、「攻め」の姿勢も重要です。2018年の農林水産物・食品の輸出額は、前年を12.4%上回る9,068億円、6年連続で過去最高額を更新しました。これは自公政権の成果の賜物だと実感しています。今国会では、農林水産物・食品輸出促進法が成立しました。この法律に基づき、輸出の取り組みを一層強化し、所得の向上を目指していこうと思います。

以上のように、メディアは閣僚の辞任や「桜を見る会」ばかりに焦点をあてますが、自公が連携して、しっかりと成果を上げてきた国会でもあります。本年で、自公連立政権は20年の節目を迎えました。ときに意見の異なる両党が、虚心坦懐に話し合い、またぶつかり合うことで、広く国民に受け入れられる政策を作りだして参りました。こうした積み重ねがあったからこそ、確固たる連立を磨き上げていくことができたと思います。
いま野党合流の動きが活発になっています。そもそも党内ですら意見の異なる党同士が、選挙のために離合集散を繰り返すような合流では、決して国民の信頼は得られないのではないでしょうか。これからも、自公がそれぞれの持ち味を活かし、また緊張感を持って政権運営に取り組んでまいりたいと思います。