いさ走る(主張・メディア掲載)

2013.11.15 「再生可能エネルギー」普及のために

2020年に原発をゼロにするというドイツの取り組みの中で、そのカギを握るのは、「再生可能エネルギー」の開発・普及です。その一つの取り組みが、2000年の「再生可能エネルギー法」で開始された「Feed-in tariff」(Fit)、日本では2012年からはじまった「固定価格買取制度」という制度です。

このFitでは、電力会社に対して、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった「再生可能エネルギー」で作られた電気を、20年間にわたって「固定価格」で買い取ることを義務付けたものです。太陽光や風力による電気は、火力発電や水力発電といった電気事業者が提供する電気よりも高いので、なかなか普及しません。そこで、再生可能エネルギーを始める人たちの事業が成り立つように、発電した電気を、電力会社に20年間、固定価格で買い取らせようというものです。とはいっても、これは電力会社の負担にはなりません。我々、電力利用者の電気料金に、「賦課金」という形で上乗せされていく仕組みになっています。つまり、「固定価格買取制度」が進めば進むほど、消費者が負担する「賦課金」が上がり、電気代は高くなっていきます。

それでは、この「賦課金」は永遠に上がり続けるのかというと、そうではありません。「再生可能エネルギー」が普及すればするほど、初期投資に必要な額は下がっていきます。つまり、たくさん売れると、太陽光発電のパネルの値段が下がり、また風力の羽を作る値段が下がるのです。そうすると、20年もたてば、「再生可能エネルギー」でも、十分、今の電力事業者の提供する火力発電と同じくらいか、あるいはそれよりも安くなるでしょう。つまり、10年、20年単位で電気料金は上がり続けますが、いずれどこかで「頭打ち」して、下がり始めることになります。

この制度のポイントは、「頭打ち」が来るまでの間、上がり続ける電力料金に家庭や企業が耐えられるかどうかです。これが、ドイツの「Fit」、あるいは日本の「固定価格買取制度」と言われるものの仕組みです。

まだまだ始まったばかりの日本の「固定価格買取制度」ですが、どれくらい電気料金に「賦課金」が上乗せされているかというと、今年2013年では0.40円/kWh。標準家庭で換算すると、だいたい月120円くらいが、「再生可能エネルギー」にシフトするために上乗せされた料金です。そして、上記の仕組みからすると、この上乗せ料金は増え続けることとなります。

ドイツはどうかというと、2000年から始めたこの制度によって、毎年「賦課金」は上昇を続け、現在、一般家庭で月2000円の上乗せ料金が発生しています。今後、ますます上がり続ける状況ですが、さすがに家庭への負担が大きすぎるんじゃないかという議論がおこってきました。そこで昨年、ドイツ政府は、1万kW以上の電気をつくる太陽光発電事業者の電気は、買い取らなくってもよいという法律改正を行いました。買い取ってもらえると思って、「再生可能エネルギー」を始めた事業者が、はしごを外された形になってしまいました。

こうした問題は抱えつつも、それでもドイツは、様々な取り組みによって、「再生可能エネルギー」の利用を国内に広げてきました。全電力にしめる「再生可能エネルギー」の比率は、2000年の6.6%から、2006年には11.2%、そして現在は25%とまでなりました。メルケル首相がたてた、2050年には「再生可能エネルギー」50%を目指すという目標達成には、本当の挑戦はいよいよこれからだ、という雰囲気がドイツ政府部内にもあります。「エネルギーシフトは、必ずできる。ただ、マーケットに賢明な参加者がいてこそ、である。」

いずれにしても、我が国においても、判断材料となるすべてのデータをきちんと示したうえで、国民的な議論を進めていく必要があると思います。