いさ走る(主張・メディア掲載)

2016.03.11 東日本大震災から5年に寄せて

「がんばろう、東北!」「頑張ろう、日本!」との声をかけあいながら、復旧・復興に向き合ってきた5年間。でも、頑張ってきた被災者の皆様にとって、頑張らざるを得なかった皆様にとって、さらに「頑張ろう」と投げかけられる言葉は、ときに心を引き裂くようなこともあったのではないかと思います。
 震災から5年間、わたしは政治が何をしてきたか、政権が復旧・復興をどう進めてきたかを、ここで語るつもりはありません。当たり前であった日常が突然失われ、そんな日常がどんなに貴重なものであったか、そしてそれがもう戻らないとんだ毎日、思い知らされる。日々、挫けそうになりながらも踏ん張ってきた皆さんにとって、政権の成果なんてどうでもよい話です。
 私が希望を見出すのは、隣人が困った時に、多くの日本人が手を差し伸べたことです。あるいは、少なくとも自分に何ができるかを、心に問うた人たちがたくさんいたことです。さらには、日本人だけでなく、世界中から、地球の裏側からも、多くの真心と支援の手が差し伸べられたことです。
 5年前と比べ、「きずな」は深まった気がします。いざとなったら、隣人を見捨てない。どれだけつらく絶望に苦しめられたか、被災していない私は、本当に理解することはできないかもしれません。でも被災地に行くたびに、皆さんがこの絶望の中からそれでも立ち上がり、乗り越えようとする姿に、私も勇気づけられました。日本も世界も勇気づけられて、「きずな」がより深まったんだ。私は、そう確信をしています。
 まだ復興は終わっていません。苦しんだ分だけ、これまで以上に人々が輝けるような地域や社会を作っていく。それが達成されるまで、復興は続きます。「人間の復興」、1人の隣人として、これからも全力で取り組んでまいります。